まもコラム

これからの地域包括ケアシステムには
介護ロボットが欠かせない

超高齢社会を迎えた日本では、要介護認定を受けた人の数が年々増加しています。
また、高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯は、高齢者のいる世帯の約6割を占めています。このような状況の中、「最期まで住み慣れた自宅で過ごしたい」と考える人は多いのではないでしょうか。
そこで、国はこの思いに応えるべく、地域包括ケアシステムの推進を進めています。この地域包括ケアシステムが今後広がっていくのに欠かせないのが、介護ロボットの活躍です。今回は、なぜ地域包括ケアシステムに介護ロボットが欠かせないのか、詳しくみていきましょう。

地域包括ケアシステムとは

高齢者がいつまでも住み慣れた自宅で生活するためには、さまざまな福祉サービスが必要となります。そこで国が今進めている対策が「地域包括ケアシステム」の推進です。
すでに全国で地域包括ケアシステムが導入され、各自治体の実情に合わせて少しずつその体制づくりが進んでいます。しかし、地域包括ケアシステムとはどういうことなのか、よくわからない人も多いのではないでしょうか。
この項目では、地域包括ケアシステムについて詳しく見ていきましょう。

地域包括ケアシステムが始まった背景

日本は今、超高齢社会に突入しています。高齢者の人口は3,500万人を超えており、当面の間は高齢者が急速に増え続ける傾向が続くといわれています。高齢者が増え続けるということは、健康上の不安を抱える人や介護を必要とする人も年々増えていくと予想されます。また、介護が必要な状況になっても「住み慣れた自宅で最期まで暮らしたい」と思っている人は多いでしょう。しかし、高齢者を支える世代である20~60歳までの現役世代の人口はすでに減少傾向にあります。介護保険サービスを支える介護職も慢性的な人材不足に悩まされており、このままでは自宅で暮らす高齢者を現役世代で支えるのは難しい状況です。
そこで、国は高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために必要なサービスを一体的に提供する仕組みをつくりました。それが「地域包括ケアシステム」です。

地域包括ケアシステム5つの支援

地域包括ケアシステムでは、次の5つの支援を一体的に提供することで、高齢者が地域で暮らし続けられるような環境を整えます。

1.住まい

地域包括ケアシステムでは、生活の拠点となる場所を「住まい」と定め、この場所を中心とした支援を行います。住まいには、自宅のほかにサービス付き高齢者向け住宅といった施設も含まれます。

2.医療

急性期や回復期のリハビリ病院などの専門的な医療機関だけでなく、かかりつけ医や地域の連携病院とも協力して、高齢者の健康を守る支援を行います。日常的な健康管理をかかりつけ医や地域の連携病院が、専門的な治療が必要となった時には専門の医療機関が担当します。

3.介護

介護には、自宅にいながら受けられる在宅サービスと、施設に入所して介護を受ける施設・居住系サービスがあります。利用する人の心身状態や生活環境、希望に応じて、うまく組み合わせながら、その人らしい生活ができるよう支援します。

4.予防

今の健康状態が長く続くよう、介護予防に努めるための支援を行います。自治体が行う介護予防の総合事業だけでなく、地域住民やNPO法人などが行う交流サロンなどへの参加も予防支援の一環となります。

5.生活支援

いつまでも地域で暮らしていけるよう、生活に関わる支援を行います。配食サービスや食材配達、移動販売だけでなく、地域住民による声掛けや安否確認も生活支援となります。また、予防支援である交流サロンやコミュニティカフェへの参加や声掛けも生活支援のひとつです。

地域包括ケアシステムの課題とは

地域包括ケアシステムは2005年に始まり、2011年からは各自治体で構築に向けて取り組んでいる状況です。この取り組みが始まって10年近い年月が経ったことで、次のような課題が見えてきました。

知らない人が多い

地域包括ケアシステムは、医療や介護などの専門職や行政、地域住民など、さまざまな人たちが連携をとっていくことで高齢者を支えるシステムです。そのため、関わる可能性のある人たちがそのシステムについて知っておく必要があります。
しかし、地域包括ケアシステムの構造や役割を解説したパンフレットがわかりにくいことや、具体的な取り組み内容が記載されていないことが多いため、「言葉は知っていても内容はよくわからない」という人が少なくありません。また、「自分はまだ周りに支えてもらう立場ではないから」と、自分事に捉えられないために興味を持ってもらえず、地域包括ケアシステムという言葉自体を知らない人も多いのが現状です。
地域包括ケアシステムを浸透させるためにも、まずは、「地域包括システムとはどういうことなのか」をいかに周知させるかが大きな課題といえるでしょう。

地域差が大きい

地域包括ケアシステムは、その地域の特性に合わせる必要があるため、まずは自治体が主体となって体制づくりを進めていきます。
例えば、高齢者の多い中山間部では、高齢者同士のつながりは強いためサロンのような集いの場といった地域資源は十分にあります。しかし、地域全体が高齢化しているため、支える側の若い世代が少なくマンパワーの不足が課題となります。一方、都市部では病院や介護施設などのインフラは整っているものの、これからさらに急増するであろう高齢者を支えるためのインフラ整備をさらに行っていかなければならないという課題があります。
このように、自治体によって資源や課題には違いがあるため、地域包括ケアシステムの体制も地域差が大きくなっています。

担い手が不足している

地域包括ケアシステムでは、多くの人が関わる必要があります。しかし、その役割を担ってくれる人材は不足しているのが現状です。
医療や介護の現場はすでに慢性的な人材不足に陥っており、特に在宅の現場を希望する人は少ない状況です。また、日本は少子高齢社会であるため、高齢者を支える現役世代は減っていく一方で、近所付き合いなどを避けたいという人も少なくありません。地域包括ケアシステムを構築する為にも、どうすれば多くの人が地域に関わってくれるようになるのかが大きな課題といえるでしょう。

人材の質にばらつきがある

地域包括ケアシステムを支えるうえで重要となるのが、支える人材の質です。特に、中核的な役割を果たすケアマネジャーには、利用者の心身状態や希望、隠れたニーズを把握する能力が求められます。ところが、ケアマネジャーの中には利用者のニーズを正しく読み取れない人や、家族の意向ばかりに沿ってしまう人が残念ながら存在しています。また、ケアマネジャーが地域包括ケアシステムについてしっかりと理解していなければ、システムをうまく活用することもできません。さらに、利用者に近い存在である民生委員が関わりすぎてしまうと、利用者の望む支援とは違う方向で進んでしまうこともあります。
地域包括ケアシステムを支えるのは人であるため、関わる人々の質がシステム自体の質に影響を与えることが今後の課題となっています。

地域包括ケアシステムの中で介護ロボットはどんな役割を持つ?

地域包括ケアシステムにおける課題を克服するうえで、活躍が期待されているのが介護ロボットです。
介護ロボットには、介護者を助けるものや利用者の負担を軽くするもの、遠く離れていても見守れるものなどがあります。このような機能は、地域の中で自分らしく暮らしたい高齢者にとって、強い味方となってくれます。
地域包括ケアシステムの中で、介護ロボットが実際に果たす役割には、次の3つがあります。

より少ない人数と時間で必要な支援を行える

地域包括ケアシステムを支える医療や介護などの現場では、前述したように慢性的な人材不足に陥っています。介護ロボットの活用は、この人材不足の問題をある程度緩和できる可能性があります。
例えば、病気や障害などにより体を思うように動かせず二人での介助が必要な利用者の介助でパワーアシスト機能のある介護ロボットを活用すれば、介護者は1人で安全かつ短時間で移乗や移動ができるようになります。少ない人数と時間で支援が行えることで、利用者は心身の負担だけでなく費用の負担も軽くすることができるでしょう。

離れていても普段の様子を見守れる

持病がある高齢者の場合、遠く離れて暮らす家族は「体調を崩していないだろうか」「ちゃんと生活できているだろうか」と不安になるものです。
特にこのコロナ禍においては、気になるけど会いに行けない、という状況も多くなっていることでしょう。近くに住む民生委員やケアマネジャーに見守りをしてもらっている人も少なくありません。
ここで、普段の様子を知ることができる介護ロボットを導入すれば、遠く離れていても見守れるでしょう。また、客観的な視点で見守れるので、見守る側の人材やサービスの質が影響することもありません。見守りシステムには、利用者の心拍数や睡眠状況を計測しデータを蓄積できるものもあるため、遠く離れていながらも利用者の健康状態を把握する一つの目安として役立てることも可能です。

利用者自身が自分でできることを増やせる

介護ロボットを利用することで、利用者自身が周りの人に頼ることなくさまざまな動作を行えるようになることがあります。
例えば、排泄の失敗が多い人が排泄のタイミングを予測できる介護ロボットを使用すれば、適切なタイミングでトイレに行けるようになるでしょう。荷物の運搬を助けるロボット機能の付いた歩行器を使用すれば、一人で好きな時間に買い物に行くこともできます。

地域包括ケアシステムの構築には介護ロボットが欠かせない

高齢者が住み慣れた自宅で自分らしく生活していくためには、地域包括ケアシステムは欠かせないものです。しかし、前述したように地域包括ケアシステムの構築には依然として多くの課題が存在しているのが現状です。そのため、地域包括ケアシステムをしっかりと機能させていくためには、地域に関わる人だけでなく、さまざまな先端技術を活用することも今後重要となってくるでしょう。介護ロボットはこれからますます技術が発展し、さまざまな現場で活躍することが期待されています。近い将来、介護ロボットは地域包括ケアシステムに欠かせない存在となるのではないでしょうか。

【参考サイト】

中村 楓

介護職として十数年のキャリアを継続しながら、介護の世界をより良いものに変えていきたいという夢を持つ介護福祉士です。
介護専門ライターとして、介護に関わる記事を多数執筆してきました。